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 本阿弥書店月刊誌 「俳壇」 より

本阿弥書店



滑稽俳壇  2018年6月号  八木健 選

四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。

●特選


  亀鳴くや兎思はずもらい泣き / 西尾泰一


  子どもの頃に聞いた「兎と亀」のお話の後日談。
  競争に勝った亀はおごりの末にしくじり、
  あの日、寝過ごして失敗した兎は反省して成長した
  かつてのライバルは、今や友情で結ばれている。
  めでたしめでたし。






  役人が嘘をつくから鳥帰る / 田村米生


  原因と結果の極めて説明的な句であるが、
  「鳥帰る」の動機を思いがけぬところに見つけたのが良い。
  国政批判に鳥を巻き込んだ巧妙さを評価したい。
  帰る所があるなら俺たちも
  鳥になりたいね。






  デコポンを胸の辺りに添へて見せ / 三好あきを


  デコポンは乳首があって面白い形。
  デコポンを二つ手にとって、
  「ほらママと同じ」と子どもがはしゃぐ姿が目に浮かぶ。
  この時、親たちは「馬鹿なことしないで寝なさい」
  などと想像の芽を摘むようではいかん。
  






 ●秀逸

昭和の日カステラの紙剥がし舐め 早川 寶
春の昼トイレスリッパ履いて出る 柳 紅生
負けん気が色に出てゐる金盞花 山本 賜
春の灯の及ばぬ辺り人の恋 加藤 賢
地虫出て先づは外界を嗅いでみる 稲葉純子
昭和の日東京タワーはまだやる気 石川 昇
春寒の裸にされるゆで卵 久我正明
啓蟄の髭剃りしあと鼻毛抜く 岩見陸二

 ●入選
干支の顔あてはめてみる春の雲 石田ひでお
逃げ腰の蟹とたはむる春の磯 小田和子
老いたれば口八丁が武器山笑ふ 久松久子
卒業生落書だけを置いてゆく 石山かつ子
春の雨タオル頭に外厠 古川勝行
子雀のこぼるる様の巣立ちかな 笠 政人
そだねーと今が旬なり変り雛 髙田敏男
エイプリルフールの口を拭ひけり 越前春生
補聴器をつけて音聴く春の雪 飛田正勝
桜草湯桶読みとは知らなんだ 馬場菊子

【筆まかせ】八木健(滑稽俳句協会会長)近詠

春火鉢肩を撫でられ引退す 引力に呼び戻さるる半仙戯
気が遠くなるほど長閑ジヤンケンポン 肩の荷をどかんと下ろし合格子
俗世に出で薇のクエッション 丸腰のまま成田発春の旅
土筆摘む視野には次に摘む土筆 杉の木やハクションをして花粉撒く
合格を祈願の絵馬に誤字脱字 歯科医院いつもコップの水温む
血統書無視して野良の猫と恋
紋付の羽織はたはた紋黄蝶
丹念に棚田耕し田植かな
目移りと脇見で花見終はりけり
物騒な世に規制なき草矢かな