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 本阿弥書店月刊誌 「俳壇」 より

本阿弥書店



滑稽俳壇  2018年11月号  八木健 選

四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。

●特選


  啄木鳥の脳震盪を心配中 /小田虎賢


  啄木鳥は、嘴で木を突いて穴を空け、中にいる虫を食べる。
  木を激しく突く。なんと一秒間に二十回。
  脳震盪を心配する虎賢君には全く同感だね。
  しかし、啄木鳥の方は、
  俳句ばかり作っている俳人を心配中かも。






  右腕の汗は左の手で拭ふ / 竹村清繁


  俳句は難しく考えなくてよろしいというお手本のような作品。
  日常の自身の動作を描いただけなのに
  滑稽句となったのは、誰もこのことに気付かず、
  誰も句にしていなかったから。
  コロンブスの卵だね。 






  祝ぐ時も人逝く時も古酒新酒 / 田中敏子


  酒は祝い事には勿論、弔いにも欠かせない。
  「清め酒」などと言って飲んでは弔事がいつしか宴会になることも。
  句の季語は「新酒」だが、
  新酒が登場すると在庫は古酒となる。
  古酒新酒で人間の悲喜も描いて巧み。
  






 ●秀逸

リビングの窓を生け簀に鰯雲 堀川明子
裏口といふものなくて心太 北川 新
水鳥に付けてやりたき滑り止め 白井道義
宇宙船無月の空を飛び続け 龍野ひろし
活きの良い秋鯖足の早いこと 西尾泰一
デート用に買ひし夏服お見合ひに 則松長子
をんなにはノーブラといふ団扇風 鈴木基之
見せかけの角を引っ込め蝸牛 柳 紅生

 ●入選
ぶらぶらとするのも楽じゃない糸瓜 小林英昭
龍田姫ネイルアートに手間取れり 細川てつや
炎天やピシピシ割れる厚化粧 石川 昇
深酔になつて本音の生身魂 髙田敏男
いわし雲崩れてよりの詩の心 西田唯士
どんぐりまなこやどんぐりをさがす子は 荒井良明
サンバイザー顔は知れねど尻美人 三好あきを
家族出払ひべつたら漬けを厚く切る 山本 賜
草刈つて隣の家が良く見える 稲沢進一
脛はもう齧り尽くされ生身魂 田村米生

【筆まかせ】八木健(滑稽俳句協会会長)近詠

爺爺爺爺爺爺眠眠眠眠眠と蝉 片蔭は入場無料でございます
クレーンよりずつと大きい虹の橋 大西日熟れたる色をしてゐたり
慌て者の代表流し素麺は もじもじとして水虫の薬買ふ
青春はニキビとビキニ海の家 このところ箪笥の主となり水着
どちらが暑い猛暑日と酷暑日は 具沢山帰省子もてなす味噌汁は
帰省子を見送る親のすつから感
秋の蚊と侮(あなど)る脇の甘さかな
行きあたりばつたりに飛ぶ飛蝗かな
端居して孤独の二文字弄(もてあそ)ぶ
高値に驚く秋刀魚の眼のつぶら感