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 本阿弥書店月刊誌 「俳壇」 より

本阿弥書店



滑稽俳壇  2019年8月号  八木健 選

四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。

●特選


  土用干他人が見れば資源ゴミ /田村米生


  「他人が見れば」は「いずれはこれも」と
  置き換えることもできるね。
  著名人の句集や俳論集など、書棚を見るたびに悩ましい。
  俳句関連の書籍は大半が「積ん読」であるから、
  資源ゴミとなる瞬間に価値を生む。






  蛇苺食べてる蛇を見たことない / 小田和子


  蛇苺には毒があると思われがちだが無毒である。
  蛇が好んで食べる苺なのだろうと思う人も多いが、
  大半の人はここで思考が止まる。
  小田さんは「詩人」の資格あり。
  俳句はこんなふうに気楽なつぶやきもいい。 






  新玉葱に男涙の台所 / 壽命秀次


  演歌にしてもよさそうな語呂だね。
  単身赴任で四十年、定年まで勤めあげたお父さん。
  漸く戻ったわが家での第二の人生は、
  家庭の主夫として終身雇用されることに。
  ああ、今日の素材は新玉葱の男涙の物語であった。
  






 ●秀逸

半熟の句跨りなり昼寝覚 柳 紅生
冷やし酒口が迎へに行くところ 原田 曄
杜甫の杜は杜撰の杜なり杜若 田島竹四
人の世の習ひ覚えし花疲れ 村松道夫
麻服の皺がなんだか長寿めく 加藤 賢
青芝はОB誘ふためにある 阿部鯉昇
団欒の輪からはじかれてる甚平 小林英昭
訳ありの土地に一面小判草 石川 昇

 ●入選
時計草臨時列車をまだ知らず 髙田敏男
白昼の交尾に励む鯉幟 笠 政人
年中夏服カーネル・サンダース 稲葉純子
年号で三つに切られ生身魂 松村正之
茗荷汁に冤罪のもの忘れ 荒井 類
性別は不詳なれども葱坊主 稲沢進一
形代を川下で待つ舞台裏 久松久子
末つ子は年中お下がり更衣 横山喜三郎
舟唄に茶々を入れたる行行子 腰山正久
蝸牛制限速度保ちつつ 竹村清繁

【筆まかせ】八木健(滑稽俳句協会会長)近詠

見たくないニュースも読んで聖五月
夏めくの気分は七分袖ぐらい
炎天を来て半熟の人間に
アロハシャツど派手の一歩手前買ふ
夏蜜柑一家そろって顔顰(しか)め
言うなれば筋肉隆々雲の峰
選択肢それほどになき更衣
石投げて夜光虫の海華やかに
退色の帽子にあまたの登山歴
顔半分ぬらしてメロン食べ終はる
大人つぽい顔夏燕と呼ばれ
夕凪に待たされてゐる長さかな
定位置にゐてこそ守宮の資格かな
冷酒を啜るくちびるうすくして
譜はよめずとも麦笛の名演奏