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 本阿弥書店月刊誌 「俳壇」 より

本阿弥書店



滑稽俳壇  2019年1月号  八木健 選

四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。

●特選


  賽銭を供えて気づく神の留守 /阪根瞳水


  賽銭箱に金を投げ入れる時、
  神様が見ていてくれるといいなと思う。
  供えた後で今は「神の留守」だと気付いた。
  「しばらく留守にしますが賽銭の効き目は同じです。よろしく」
  と張り紙をすべきだなあ。






  その順はいつ決まりしや降る木の実 / 板坂壽一


  木の実の降る音はパーカッション。
  降り方は気ままだが、耳を凝らして聴くと
  不規則のなかに音楽性がある。
  作曲家では書けない究極の音楽のように思うね。
  斯くして木の実降る順は、音楽の神が決めている。 






  行く秋や呼び出し行司日本人 / 柳  紅生


  大相撲の主役を外国の力士に渡して、
  「国技じゃないね。外国技だ」など
  と悪口を言われて久しい。
  行司だけは日本人なので、ここは安心だが、
  そのうち横綱審議会に外国人枠をつくるのではないだろうか。
  






 ●秀逸

引力にすりよつてゆく林檎の恋 小林英昭
後手に障子をしめたのが返事 柏原才子
寝転びて地球を背負ふ天高し 石田ひでお
新婦酩酊新郎号泣秋日和 阿部鯉昇
深入りを嗜めらるる炬燵かな 堀川明子
百台の暴走族の夜長かな衣 宮田久常
愛ちゃんの引退さやかピンポーン 西田唯士
もう少し風にまかせよ朴落葉 鈴木基之

 ●入選
ほろ酔に月のよろよろ付いて来る 荒川清司
ねこじやらし風あるやうに同じ向き 久我正明
独立の意思蓮の実の遠く飛ぶ 尾関凍歩
朝刊はスポーツ欄から文化の日 北川 新
増えてゐる略式日本語文化の日 山本 賜
七人掛けにスマホ七人文化の日 腰山正久
失業者呪ふ勤労感謝の日 田村米生
喧嘩してまた仲直り芋の露 久松久子
内角をえぐるスライダー台風来 佐々高逸
流星に金星願ふ力士かな 小泉芝雲

【筆まかせ】八木健(滑稽俳句協会会長)近詠

手の甲に人を恐れぬ冬の蠅 蟷螂の親ゆずりなる喧嘩腰
尺蠖のライフワークはストレッチ 遠くても味が良ければ走り蕎麦
木守柿啜れば多分陽のにほひ 旨さうな色が怪しい毒茸
スリットに隙間風入るドレスかな ご飯粒が接着材や文化の日
松手入れ鋏の音のてきはぱきと 句に詠めばなぜか上品木の葉髪
体重計に脅されてゐる食の秋
秋の蚊に授乳のごとく血を吸はせ
プロンプターの声筒抜けの村芝居
枯れ菊となる大臣賞も選外も
陽に干してふつくら布団は冬の季語