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 本阿弥書店月刊誌 「俳壇」 より

本阿弥書店



滑稽俳壇  2019年6月号  八木健 選

四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。

●特選


  先には笑はぬ春愁の鏡かなに /竹村清繁


  「笑顔の町づくり」運動は、
  全国至るところで展開されている。
  しかし、このご時世にどうやって本物の笑顔を増やせるかが課題。
  安上がりで良い方法がありますよ。
  鏡の中の自分に笑いかけてごらんなさい。






  トイレへの距離を測りて花筵 / 柳 紅生


  「飲みなよ」「ほい来た」と酌のテンポも速くなりがちで、
  余計にトイレが近くなる。
  「測りて」と言っても目測だが、
  尿意を催したら花見どころではなくなるから
  場所取りの大事なポイントである。 






  永久の眠りの練習のごと朝寝 / 荒井良明


  眠れぬ夜を「ラジオ深夜便」を聴いて過ごし、
  朝方になってとろとろと眠くなる。
  心地良い朝寝も家人には心配らしく、
  生きているかと耳元で怒鳴られることも。
  季語の本意を「永久の眠り」で裏切って滑稽。
  






 ●秀逸

竹馬が上手で今は杖頼り 久松久子
筍の伸び放題に人は老い 柏原才子
蝌蚪の国黒装束のせはしなき 村松道夫
春愁のもとはと云へば親不知 細川てつや
辞世の句ボツで長生き春愁ひ 白井道義
春コートクリーニングの旅に出る 小田和子
ポイントの有無がポイント山笑ふ 松村正之
クローンの本家造園業の挿し木 小田龍聖

 ●入選
場所取りの者みなスマホ花の下 板坂壽一
彼奴(かやつ)嵌(は)め留飲下げる四月馬鹿 田村米生
ぶらんこを漕ぐ天に足地に頭 龍野ひろし
春愁のばさりと音のする睫毛 小林英昭
のどけしや駐在さんも高鼾 西尾泰一
春うらら夫と段差に手をつなぎ 永井弘子
文化財を二重三重に守る蜘蛛 横山喜三郎
美食家の待つ只中へ地虫出づ 宮田久常
ひよつとして鳴くかも掌の鶯餅 稲葉純子
新社員今のところは黒い髪 石川 昇

【筆まかせ】八木健(滑稽俳句協会会長)近詠

半熟となりて仕上がる日向ぼこ
吹いてから命名される春一番
春眠の危険仰向けの歯科の椅子
口づけのあとは叩かれ紙風船
諍ひに似て蝶々の縺れるは
筍が好き人柄も繊維質
独酌の似合はぬものに花見酒
春宵の値千金持て余す      
症状の季重なり花粉症と春の風邪
極秘裡の足の交際春炬燵
親の期待は名の画数に入学児
胃もたれのなくてシンプル春ランチ
笑はれる人になろうか万愚節
遅霜にある執拗な季節感
薬効のあれどどくだみ日陰者