滑稽俳壇 2025年3号 八木健 選
四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。 ◆滑稽俳壇は今号より二十一年目に入りました! ●特選 月の裏合はせ鏡をして見るか /菊池ひろこ 月の裏側を見るにはまず衛星を打ち上げて「合わせ鏡」をセットする。そして、その情報を地球に送り返せば簡単だ。しかし、月も地球も自転、公転をしているから問題は打ち上げのタイミングである。JAXAとNASAに相談してみよう。 炬燵猫竈(かまど)なき世に生き残り /米田正弘 家庭から竈が消えてしまい、今や竈猫は絶滅してしまった。炬燵の登場によって炬燵猫に進化、変身して生き残ってはいるが、この炬燵も生産台数が激減。炬燵猫の存続も危ぶまれている。竈、炬燵の次は、何の猫になるのかなあ。 尻餅で餅つき爺の初仕事 / 西尾泰一 尻餅という失敗を、初仕事という明るさに換えて佳句。「尻餅」は「餅搗き」が下敷きになって生まれた言葉だろう。大きく言えば、餅搗きの仲間と言えなくもない。しかし、季節感に欠けるのが難。通年の季語とするのはどうだろうか。 ●秀逸
湯豆腐の角に感じる硬さかな 北風も膝も小僧と日本語 悴む指なめて取り出す新紙幣 作り置きチンの音鳴る女正月 山眠りソーラーパネル稼働中 日向ぼこトイレの近き話など 車窓からバイバイねんねこの子が見えず 筋肉の仁王に辞儀や着ぶくれて
浜田萱草 あきのさくら 市川蘆舟 平田 秀 川口八重子 曽根新五郎 久松久子 板坂壽一
終バスに無賃乗車の木枯らしと 酒肴そろい朝から冬安居 足でよい手は要らないと蛸と烏賊 本題より余談が楽し初句会 咄家の扇子で食ぶる夜鳴蕎麦 息白し罵詈雑言も甘言も 年越しや太く長くと饂飩食ふ 暗黙の右肩上がりのお年玉 木の葉髪それでも通ふ理髪店 喉通す前によく噛め雑煮餅
大石洋子 髙田敏男 馬場菊子 志村宗明 龍野ひろし 村越 縁 菱沼惣一郎 白井道義 佐藤 篤 小泉芝雲
年惜しむケチであらうとなからうと プラス志向の季語にやあらむ日脚伸ぶ 七草の画像検索グーグルで 二月来る長居はせぬと前置きし 留年に季語の資格があるのかな
刺されても感謝の気持ち針供養 エスカレータの友を羨望落第子 カレンダが有無を言はせぬ二月尽 永き日のお日様次第に楕円形 熊穴を出るてふ季語の恐ろしく
紅白は人参大根節料理 元旦に一月付けるのが蛇足 七草は言へても言へぬ七福神 恐ろしや賀状の蛇がリアルすぎ 三が日過ぎれば淑気色褪せて