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 本阿弥書店月刊誌 「俳壇」 より

本阿弥書店



滑稽俳壇  2017年9月号  八木健 選

四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。

●特選


  良妻のバッグの底のサングラス / 荒川清司


  このドラマを推理するならば、
  ①「良妻」という伏線がある。
  ②バッグの底を覗いたのは夫である。
  ③見つけたのはサングラス。
  妻は隠していたのかどうか。良妻は仮面だったのか…。
  滑稽句にあるサスペンス。






  喧嘩かと思ふ大声敬老日 / 柳 紅生


  喧嘩しているらしき大声。
  何やら言い合っているが、なんだ、よく見ると笑っているじゃんか。
  相手の耳がよくても自分が遠いと大声になるもの。
  喧嘩と勘違いされてもかまわん。
  外に出かけてどんどんしゃべろう。






  知事が着て副知事が着てクールビズ / 細川てつや


  経費節減を県民に見せようと発案したのは、財政課長。
  冷房温度を二度高く設定し、電気代を年間二十万円節約の試算。
  課長クラスまで麻混紡のシャツを支給し、
  一枚五千円で予算が三十万円。
  初期費用は仕方ないね。
  






 ●秀逸

  ちちの日に濁点つけて呼ばないで    田村米生

  遠雷やキスする男女目を閉じる     多田 檀

  闘牛の世界遺産の涎かな        和城弘志

  甚平の肩書好きよ名刺出し       壽命秀次

  父の日に届く荷物の着払い       上谷敏雄

  すててこをたたみ直して昭和の日     稲葉純子

  夏休みハシビロコウと向きあつて    山本 賜

  日焼けして留学生と間違はれ      阿部鯉昇





 ●入選

  鎹(かすがい)にならぬ子と孫敬老日   石川 昇

  
艶本に落丁見つけ曝書かな       高田敏男

  蟇坐る天動説を疑はず         竹村清繁

  欠席の声仮病めく夏の風邪       加藤 賢

  どう見てもまことに雑な鴉の巣     馬場菊子

  前世は幾何学博士蜘蛛の網      久松久子

  接吻を迫り来金魚寄り目かな     北川 新

  右手器用左手不器用水を打つ     越前春生

  蜘蛛の囲や関所のごとく張り巡る   古川勝行
  
  それ以上貌を寄せるな白牡丹     岩見陸二






【筆まかせ】滑稽俳句協会会長 八木健 近詠

罪状は血液窃盗赤家蚊(あかいえか) 密談の公開となり夏座敷
全身を使い前進尺蠖虫 水といふ弾がこぼれる水鉄砲
蓑虫として引力に逆らはず パニックの蝌蚪の尾千切れさうになる
その色は酒気帯び程度酔芙蓉 血液型に無関心な藪蚊ども
落し文手にして語る語源かな 放任が子へのもてなし夏座敷
直線にならないものよ蟻の列
露出度は裸にあらずメディア論
省エネは昔からある片蔭り
騒音と言へなくもない蝉時雨
上品な方もラムネはラッパ飲み