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 本阿弥書店月刊誌 「俳壇」 より

本阿弥書店



滑稽俳壇  2017年7月号  八木健 選

四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。

●特選


  忖度の底に損得海市かな / 北川 新


  「そ」の韻がええねえ。海市(かいし)とは蜃気楼のこと。
  市場や学園の事かも。土地の譲渡の交渉は誰かの損得を考えての便宜。
  それが忖度。
  「忖度の土地絡みなる市場・学園」
  「そそっかしい忖度をやり粗忽者」






  花どきの閣僚席の仮寝かな / 宮田久常


  「眼を閉じて考えるふり某大臣」ということですね。
  「考えるふりがいつしか熟睡に」
  「退屈な答弁良く効く睡眠剤」
  「答弁が終われば目覚めさはやかに」。
  テレビ中継も気にせず、先生はさすがオオモノですなあ。






  滑稽俳壇類句類想なく涼し / 永井弘子


  類句類想句が無いのは、文芸にとって一番大切な
  「独創」が存在するということ。
  何処かで見た誰かの句のようではいかん。
  「涼し」の気分で滑稽俳句街道を驀進しましょう。
  「ヒトハヒトワタシハワタシ滑稽句」。
  






 ●秀逸

  巻き尺を放す速さやつばくらめ   柳 紅生

  権力を夫婦で駆使し山笑ふ     鶴田幸男


  
朝寝して世間に何の支障なく    荒川清司

  
満天星の花が読めても詠めぬ佳句  小田龍聖

  
スケジュールに割り込んで来る走り梅雨 稲葉純子

  徘徊の媼を口説き早乙女に      横山喜三郎


  
饒舌の輪にゐてひとり花疲れ    渡辺敏恵

  
横坐りしたる牡丹の崩れやう    柏原才子





 ●入選

  器量よしが先に貰はる今年猫   越前春生

  
スカウトに涎を見せる牛角力   和城弘心誌

  桜餅頬ばりてきし恋の首尾    田中千波

  顔役の逝つてしまひぬ雀蜂    加藤 賢

  新入社なくて今年もまた新人   前 九疑

  自己紹介は立板に水ランドセル  壽命秀次

  誘導す空路直下の潮まねき    細川てつや

  西日受く影と影とがいがみ合ひ  古川勝行

  桜には少し贔屓のお礼肥     柳村光寛
  
  鶯餅ここが頭と決めて喰ふ    村上小一郎






【筆まかせ】滑稽俳句協会会長 八木健 近詠

交番に届けられたる落し角 毛皮コート脱いで全裸の筍に
遊び半分の遊具のことか半仙戯 人間も死ねば吹かるる花の屑
香らせて月下美人はミセスとも この蠅もいずれ絶滅危惧となる
初物としての品格春の蠅 世の動きスマホでチェック昼寝覚
黒揚羽夜会服着て何処へやら 夏に入るヌードポスター壁に貼り
噴水を見てゐて退屈など忘れ
よくもまあ等間隔に蟻の列
ひろがりの壮大こそが麦の秋
蒔くよりも埋める大きさ枇杷の種
脱力の技のすとんと心太(ところてん)