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 本阿弥書店月刊誌 「俳壇」 より

本阿弥書店



滑稽俳壇  2019年3月号  八木健 選

四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。

●特選


  筆ペンはペンにはあらず賀状書く /市川蘆舟


  「筆なのにペンとは不思議」ということだね。
  蘆舟さんのように疑問を持つと佳句ができる。
  ただし、疑問を持つには、
  素直さ、頭の柔らかさ、好奇心などが要求される。
  ただボーッと生きていては詠めませんよ。






  俳人にかなり好かれる冬の蠅 / 山本 賜


  日常的に冬の蠅はあまり見かけなくなったが、
  俳句の世界では元気に繁殖している。
  なぜなら、動きの鈍い蠅は観察しやすく、
  小さな生き物を愛する俳人達の心をくすぐるからね。
  その俳人の嗜好も句材になった。 






  正月のテレビで馬鹿になりかける / 石川 昇


  最近のテレビは、芸の無い“芸人もどき”や
  教養のない“知識人もどき”に席巻されておる。
  公共の電波を無駄遣いとはけしからん事だ。
  お正月特番は特にひどい。
  俳句でも詠もう。「薄つぺらな笑いが溢れお正月」。
  






 ●秀逸

骨抜きにされてしまひぬおでん酒 柳 紅生
賀状書く近況をつい飾り立て 板坂壽一
百億円毟る爺さん冬籠 伊藤 斷
脳内が豚肉に見ゆ食の秋 永井貴士
毛筆に伝統の意地賀状書く 稲葉純子
鯨食ふグリンピースを付け合わせ 阿部鯉昇
毛糸編む腹のややこにせかされて 小林英昭
人間が縄で囲われお山焼 柏原才子

 ●入選
ロボットの先祖は案山子文化の日 久松久子
初御籤ハヅキルーペをかけて読む 田村米生
網の上諍いもなく餅ふくれ 髙田敏男
尻を焼く焚火を囲み艶話 壽命秀次
陽の陰るところが好きな雪だるま 稲沢進一
余生には七曜要らず冬うらら 石田ひでお
鯛焼を匹で呼びたる売子かな 龍野ひろし
幼子にして厚氷踏み砕く 堀川明子
鬼やらひ前にマンション追ひ出され 横山喜三郎
羽子板を値切つた分がタクシー代 腰山正久

【筆まかせ】八木健(滑稽俳句協会会長)近詠

結論を急げと爆ぜる囲炉裏榾(ほだ)
指折っているのか俳人の懐手
皮手袋はめれば指のスクワット
売り声の焦げたるやうな焼芋屋
後ずさりして出来を見る注連飾
年惜しむかたちあるものみな捨てて
水平線あたりは沸騰初日の出
もの拾ふ時にはほどき懐手
個人情報隠してしまひ大マスク
隠しごと背中にホカロン貼ってゐる
いつもより長めに握手年惜しむ
よそゆきの言葉ちりばめ賀状書く
論客の俳人がゐる忘年会
この家の主役は犬か年賀状
お歳暮は高からず且つ安からず