| お問い合わせ | ご利用にあたって | 

ホームへ

 


 本阿弥書店月刊誌 「俳壇」 より

本阿弥書店



滑稽俳壇  2017年11月号  八木健 選

四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。

●特選


  新米を食べてすぐ乗る体重計 / 阪根瞳水


  新米をつい食べ過ぎた。
  ダイエットのためには我慢しなくてはならぬが、
  こう旨くては箸が止まらん。
  「痩せたい、でも食べたい」は永遠のテーマ。
  なあに、体重計には二、三日してから乗ればいいのさ。






  リモコンのやうな孫ゐて日向ぼこ / 柳 紅生


  新聞を読みたいなあとつぶやけば、
  「ハイ、じいじ」と持ってきてくれる。
  次は老眼鏡、次はお茶。女房よりよっぽど気がきくわい。
  可愛いのう。爺は平社員だったが、
  今やっと人を使う立場になったのである。






  松手入手抜きごまかす空鋏 / 田村米生


  なるほど、「フェイント」ですね。
  この技は、髪を切る時、俎板で葱を切る時にも応用できる。
  理髪店、料理屋でも調べてみるといいね。
  いずれも、いかに「空」と気付かせないように
  するかが腕の見せどころ。
  






 ●秀逸

西瓜割るごとすつきりと遺産分け 小泉芝雲
蜩に「その」を冠せば我家なり 松田征士
土踏まずしきりに見せてショーの海女 尾関凍歩
たつぷりと余生へ賞与大昼寝 荒川清司
どう見ても逆さまだらう美術展 小田虎賢
食欲の秋嘆き合ふ露天風呂 永井弘子
うやうやしく出る料亭の零余子飯 柏原才子
秋空の高さも知らずスマホ族 石川 昇

 ●入選
取り敢えずビールと言うて最後まで 原田 曄
妻のゐて気の抜けぬなり夏休み 越前春生
七十二年何がめでたい終戦忌 飛田正勝
蚯蚓鳴く雌雄同体悲しくて 稲葉純子
すぐに出る絆創膏や夏の家 山本 賜
老老の収容所めく敬老会 横山喜三郎
値下がりを言ひ訳にして鰻食ふ 白井道義
首まはらずとも生きてはいける扇風機 村上小一郎
風鈴に隠し事あり風はらむ 村松道夫
洗ひ終へよくよく見れば他人の墓 西尾泰一

【筆まかせ】滑稽俳句協会会長 八木健 近詠

缶詰にしてしまひたい鰯雲 甲高く台風煽るリポーター
ぶらさがる糸瓜に腰のくびれかな 新豆腐新種の豆腐と間違はれ
蓑虫にリサイクルてふ意識なく 俳人の特技に蚯蚓鳴かすこと
店頭の松茸いろんな人が嗅ぎ 耳なりと思つていたのが虫の声
立ち読みの習慣読書週間も 持ち重りして後悔の大西瓜
香水の種類選べずエレベーター
真夏でも懐手して龍馬像
稲架の字を正しく読める俳句歴
冷房の温度設定にも眼鏡
秋の季語日焼に痕をつけたなら