滑稽俳壇 2024年7号 八木健 選
四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。 ◆滑稽俳壇は今号より二十一年目に入りました! ●特選 国会の開催中が目借時 /曽根新五郎 季語の中には、意味が分かり難くイメージを作り辛いものがある。「目借時」もその一つ。分かりやすく説明するには具体例を言うのがいい。国会の開催中の議員の先生をご覧なさい。みなさん目借時。あれですよ。 何も言うな今日は四月朔日ぞ /前 九疑 四月一日は嘘をついても許される日。しかし、本当の大事な事を言っても、嘘とされてしまう危険性のある日でもある。ウソかホントかややこしい日は、何も聞かず何も言うまい。一年で一番、発言に注意すべき日。 言い訳が俺にそつくり新社員 / 永井貴士 人間は、他者の中に自分でも嫌いな「自分の欠点」を見つけがちで、同じ欠点を持つ人を無意識に嫌う。これを、同族嫌悪とか近親憎悪と言う。しかし、この新社員は、そっくり過ぎて他人とは思えずかわいい。 ●秀逸
矛と盾に慣れて憲法記念の日 絶対になにかあるはず木下闇 目刺焼く煙に涙昭和の日 啓蟄やyouは何しに国会へ 馴染めども友にはなれず巣の燕 母の日は母へ御恩の還元祭 円安が招く外人花見客 運命線に汗にじませて合コンへ
森 一平 伊藤博康 平田 秀 宮田久常 渡部 健 内野 悠 松永朔風 村越 縁
慣れぬ下駄履いて整ふ花衣 人情話が未だ健在善根宿 本当は怠け者なり通し鴨 永き日の六法全書に誤字探す 三椏とジャンケンポンをして飽きず おしつこを上手にかけて蟬逃げる 亀鳴くや浦島太郎居らぬかと 桜蕊なぜ降るのかとロダン像 ゴールデンウイークの省エネ対策引き籠り 終われない理由は日永立ち話
米田正弘 髙田敏男 柏原才子 田上勝清 北川 新 田村満生 平野暢行 西村伸子 稲葉純子 中邑義継
あれへ行く遍路すたすた春の季語 嘘ついた目が笑つてる四月馬鹿 燕飛ぶ視界のすべてを縄張りに インバウンドの最古参として黄砂舞ふ 花の雨無理して雨を褒める季語
我慢せよ挿木の根付き見たくても 亀鳴くはそんな気がするやうな季語 試着とは頭に載せること春帽子 春愁あげた口角すぐ戻る 風生れて動画となりぬ花の景
逝く春のエビデンスとして桜蕊 接骨木(にはとこ)の花の手入れに骨を折る 仲が良すぎるあくび君と日永ちやん 片恋のやうなものだな逃水は 田返しは耕しのこと借りてない