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 本阿弥書店月刊誌 「俳壇」 より

本阿弥書店



滑稽俳壇  2019年5月号  八木健 選

四月号から「微苦笑俳壇」は、「滑稽俳壇」に名称が変わっています。

●特選


  婚活のはしごをすれば花は葉に /柏原才子


  何度もお見合いをしたんだね。
  気が付いたら葉桜になっていたという諦観のただよう作。
  「花は葉に」の季語に気持ちを預けたところが巧い。
  哀感が透けて見えるが、
  それがベタついていないところもいい。






  観梅のここにも監視カメラかな / 石川 昇


  日本では五百万台、中国では一億七千万台の
  監視カメラが設置されているとか。
  俳人は決して枝を折ったりはしない。
  ただ句を詠み、香りを肺に入れて持ち帰るだけなのだが、
  「監視カメラの視野の中なる梅見かな」。 






  納税期得したような還付金 / 龍野ひろし


  納税は国民の義務という認識はあるが、
  何となく損したような気分にもなる。
  逆に、例え千円でも還付金があると嬉しくなるのは、
  正直に慎ましく生きているからこそ。
  多くの人の共感を呼ぶ一句である。
  






 ●秀逸

恐れ気もなく足入るる足袋の闇 馬場菊子
縦糸の雨横糸の春の川 柳 紅生
受験期や仇同士の絵馬並ぶ 横山喜三郎
磯焚火噂話の燻りぬ 小田虎賢
雪降らねども雪吊りに手抜きなし 村松道夫
花粉症物ねだるとき鼻かまず 田村米生
躊躇してゐる草餅のふたつ目は 山本 賜
終ひには厠をさがす探梅行 市川蘆舟

 ●入選
肉球を凌ぐやわらか猫柳 小田龍聖
義理ゆゑの招待状てふ絵踏かな 北川 新
冷ゆる夜は布団蛹となり眠る 野尻賢二
卒業式の祝辞熱弁「寡黙たれ」 荒井良明
海鼠にも娘盛りのありぬべし 竹村清繁
鎌倉も虚子も吃驚する余寒 松永朔風
ジャンケンは後出しばかり梅ふふむ 稲葉純子
凍滝や触れてもみたき神の脛 村上小一郎
冬の蠅俳人なればこそ寄り来 尾関凍歩
御局に惑はされゐる新社員 髙田敏男

【筆まかせ】八木健(滑稽俳句協会会長)近詠

事後承諾せざるを得ない木の葉髪
電飾を脱いでほんとの裸木に
日当たりへ民族移動日向ぼこ
風邪癒えしことをアピール顎マスク
冷え切つてゐるホカロンの死骸
お化粧の用語にあらず目貼剥ぐ
脱皮の気分重ね着を脱ぐときに
春ショール喜ぶ首の長さかな
胸襟を開けば入る春の風
国境の認識あらず黄砂降る
たんぽぽが愉快な色で咲いてゐる
饒舌が突然黙る目借時
むずむずがぽたぽたとなる花粉症
黄砂の町へ刑事コロンボのコート着て
野菜にも性別ありて葱坊主