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第十二回滑稽俳句協会報年間賞決定!
 
埼玉県 田中やすあき
犬掻きの鼻先に来る夏の波
 受賞の感想
 滑稽俳句協会に入会させて頂き、まだ年月短き身ながら、この度、第十二回滑稽俳句協会報年間賞の「天」受賞の思いがけぬ連絡に、驚きと共に嬉しい限りです。
 俳句を始めた頃より、選評してくださる方からの「面白い」との批評が、「鋭い」と言われるよりも嬉しかったので、滑稽俳句は自分に合っていると勝手に感じております。
 受賞句については、小学校にプールがありませんでしたので、子どもの頃より泳ぐことには強い思いがあった気がします。そして海は渇望を満たしてくれる特別な存在で、決して泳ぎ達者ではありませんが、全身を自然界に開放させることは、なによりも心地良かったのでした。
 本質たる滑稽俳句に、どのような未来が待っているのか想像出来ませんが、一人ではやはりここまで歩めなかったので、会員皆様に感謝し、これから少しずつであっても日々前進して行きたいと、盛夏に思っております。
ありがとうございました。
 
 
東京都 北熊紀生
霜柱踏まねば損をするやうな
 受賞の感想
 賞というものを生まれて初めていただくことになり、感激しています。
子どもの頃、通学路などで霜柱を踏んで遊びましたが、大人が同じことをしたら変な人だと思われるのは確実です。
 損をするように思っても、損をし続けなければならないのでしょう。句作は、質よりも量だと思っています。たくさん作っていると、思ってもいなかったような句が出てくることがあると思います。
 今回の拙句も、そのようなもののうちの一つです。
一日に、最低五句は作ることを継続したことが、今回の結果に現れたのだと思います。(何年か前に「天」を受賞された方は、一日二十句くらい作られていたようです)
 今後も、時に楽しみながら、時に苦しみながら、句作を続けていきたいと思っています。
ありがとうございます。 
 
 
千葉県 長井多可志
落葉にもA面B面ありにけり
 受賞の感想
 第十二回滑稽俳句協会報年間賞の「人」に選ばれ光栄です。ありがとうございました。
 生まれも育ちも愛媛県。十八歳で上京し、俳句とは無縁の専ら仕事人間の半生でした。
 ある時、同郷の先輩から「伊予人たるもの俳句の一つも詠めないでどうする」との一喝。渋々始めたのが余生の趣味となりました。
 入会したのは、写生と伝統を重んじる結社。記憶の糸を手繰り、蘇らせた思い出と想像の情景を写生するという俳句生活です。
 一方、昨年やはり郷里の縁で当会に入会しました。「俳句は滑稽なり」の本質を地でいく俳句に心が洗われます。
 十五年前に亡くなった父は五十年以上、死ぬまで川柳を続けていました。
その父が松山の先生から頂いたという雅号と滑稽精神を勝手に引き継いで、当会に投句をしています。
 私にとって、東京の句会と松山の句会は、まさにレコードのA面とB面のようなものです。  
 
 
選 評    滑稽俳句協会会長 八木健
生き生きとした個性に瞠目です。滑稽句という「文化財」がまた増えました。

「天」…クロールでも、平泳ぎでもない「犬かき」がいい。犬かきをしているうちに、作者はいつの間にか犬になりきったのである。そして、読者も、いつの間にかその鼻先が犬の鼻のように連想させられて愉快である。

「地」…霜柱を踏むのは冬の楽しみの一つ。硬過ぎず柔らか過ぎずのあの感触は、霜柱ならではのもの。一晩かけて自然が造った構造物を破壊する快感は、他では得難いものがある。巨人か恐竜になったような気分も楽しい。

「人」…落葉は自然の芸術である。その色鮮やかな表面をA面とすれば素っ気ない裏面はB面ということになる。葉に表裏があるのは当たり前だが、それをレコード盤に例えて面白い句になった。感じたままの素直さがいい。
 

 

 

令和五年八月号〜令和六年七月号特選句
   
犬掻きの鼻先に来る夏の波
わらつちやうくらい金持ち黄金虫
私からこぼれたやうに花柘榴
水割に夏の音させショットバー
天守閣でんぐり返し夏燕
無尽蔵の滝浴び心無一物
夏草を雑草と呼ぶ大雑把
我が影の我を離れぬ大暑かな
人間なのに羽根の付け根が暑い
山開き石槌の山歳取らず
蛙にまだ告げてない田はやめました
この汗が生きてる証拠滴れる
怠けてもみんな猛暑の所為になる
枝豆で語る天下も身の上も
先頭のボスが引っぱり鰯雲
神様のオンオフ蝉の鳴き止むは
台風や球種覚えてクネクネと
秋桜や女子会のごとざわめきぬ
神様は軽トラに乗り秋祭
天の川死は平等に訪れる
割り勘に端数のできて十三夜
まるごとの栗が嬉しい栗ご飯
秋の浜誰にも見せぬ膝小僧
全山に放火たくらむ七かまど
ガザの地を戦争で知る冬来たる
拙宅の補正予算で熊手買ふ
跡形もなく蟷螂の食はれけり
新札へ替へる札なく年用意
古典的貌に行きつく菊人形
霜柱踏まねば損をするやうな
落葉にもA面B面ありにけり
文化の日知事の失言じゃこ天の
社会鍋小銭にかかる手数料
年用意掃除はさつささしすせそ
終活や帯はバッグに返り咲き
盤上に勝負師の指秋澄めり
残り物集めて担ぐ福袋
お飾の角度の調整エンドレス
いつぽんづつ広げて指の日向ぼこ
海霧や誰が引きしか国境
生ハムの薄さ際立つ冬ざれて
「アレ」ってあれのことかな日向ぼこ
伊予柑を置いて私の予約席
焼芋や右手左手右手くち
雁首を揃へ討たれし落椿
シャッターもこの私も冬さびて
真犯人わからずじまい春炬燵
みいつけたかくれんばうの藪椿
春めきて空裏返すファルセット
裏金がドカンと表へ闇の春
情報は穴から仕入れ春障子
戯言を次々空へシャボン玉
社員駒栄転左遷四月尽
おもちやみたいな犬のお散歩春うらら
ドーナツの穴まで食べたと四月馬鹿
歳時記のどこかにないか閏の日
雛の眉描く細筆の息止めて
餡パンの臍春風にくすぐられ
雷やおまへは空の地滑りか
熟年は完熟なるやトマト食む
逃水に正面あるや背ばかり
生ぬるい風を濾過する網戸かな
花曇わたし優しい人になる
放任主義の庭の青蔦のびのびと
よく伸ぶる腕よ蕨へつぎつぎと
ガラスコップの影透き通る聖五月
圧倒的に粒あんが好き柏餅
アマリリス江戸の太夫でありんすか
空つぽの香水瓶にある青春
大夕立花壇の花に深情け
宅地化を厭ふひまはり手をつなぎ
打水の庭に日陰の色拡げ 
田中やすあき
谷本 宴
山本 賜
吉川正紀子
西野周次
柳 紅生
明神正道
名本敦子
赤瀬川至安
門屋 定
鈴木和枝
吉川正紀子
藤森荘吉
長井多可志
井口夏子
吉川正紀子
門屋 定
卯之町空
長井多可志
田中 勇
田中やすあき
岡田廣江
谷本 宴
峰崎成規
和田のり子
田中やすあき
小泉和子
峰崎成規
工藤泰子
北熊紀生
長井多可志
沖枇杷夫
田敏男
西野周次
井野ひろみ
和田のり子
山下正純
千守英徳
岡田廣江
北熊紀生
田中やすあき
井野ひろみ
八塚一
月城花風
西野周次
山本 賜
卯之町空
吉川正紀子
工藤泰子
和田のり子
田敏男
卯之町空
青木輝子
小笠原満喜恵
花岡直樹
赤瀬川至安
相原共良
田中やすあき
井口夏子
沖枇杷夫
峰崎成規
八塚一
太田和子
加藤潤子
浜田イツミ
桑田愛子
加藤潤子
敷島鐵嶺
和田のり子
吉川正紀子
横山洋子
柳 紅生