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第三回滑稽俳句協会報年間賞決定! |
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千葉県 菅野あたる |
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霜柱地価十億を持ち上げる |
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受賞の感想 |
この句については「『持ち上げる』に『おだてる』の意味あり。霜が溶ければ、『霜の溶け十億の土地暴落か』」。という貴重な注釈を頂戴し、この句の土地の高値の原因や高値の危うさを気付かせていただきました。
ところで私が俳句を作りだした初心のころ「相対性理論のひかり蛍の夜」という句を作って自信満々、句会に臨んだところ、結果は惨敗、句会の先生が「この句は誰のだ?」というから、「私のです」というと、先生がいきなり立ち上がり、両手で大きなバッテンを作ってダメだダメだ!およそ「相対性理論」などという語は俳句にならない!と言われ、それ以後、私はニュートンの句を作った人、ガリレオの句の人などとあらぬ名で知られるようになったことが思い出されます。
「地価」のような経済用語であっても快く受け入れていただけることに滑稽俳句の懐のふかさを感じます。ありがとうございました。 |
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兵庫県 金澤 健 |
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ふぐ料理毒よりこはき時価の文字 |
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受賞の感想 |
我々の身の回りには、笑いの種、滑稽のネタ≠ェ満ち溢れています。それらを見過ごすことなく書き留めておいて、時間のある時に、五七五で詠んでみる。そのあと、詩としての約束事を外さぬように修正(季語を入れる、切れを作るなど)を加えれば、笑いのある俳句や川柳になったりします。
今回、八木会長に選んで頂いた句もそのような過程を経て作った句で、自分としても気に入っている作の一つです。今回認めて頂いて非常に喜んでおります。皆さんもお店に入って品書きを手にし、句に詠まれているのと似たような経験をされたことがあるのではないでしょうか。
ごくありふれた日常生活に息づく滑稽美≠見逃さず、それを詩として表現し、読者の皆さんと共に滑稽の感動を分かち合うべく、今後とも精進を続けて参りたいと思っております。 |
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愛媛県 伊藤洋二 |
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初メロンかも知れぬこの不在票 |
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受賞の感想 |
初回句が「特選」そして「人賞」に、ありがとうございます。俳都松山でお仲間と「出湯句会」並びに「松山滑稽句会」由緒ある「愚陀佛庵句会」・松風会に参加しております。
お仲間よりお誘い頂き即入会し、事務局の方からもご丁寧なご案内を頂きました。代打「八番レフト伊藤君・背番号一七」にチャンスを頂きヒットが打てました。
七月の運勢は「発展の月」とありました。コツコツと土づくりを行って、種を撒き大切に育てた種から「芽」が出る時期となります。撒いた種は、必ず芽が出ます。
十七文字による「創造の苦しみ」と「入選の恍惚」。そして「句会の楽しみ」を糧として団塊の階段を……。お仲間の方々、ご検索頂いた皆様に重ねて御礼申し上げます。
後日談、宅配便の「要冷蔵」を受取り、「不在票」とはなりませんでしたが、な、な、なんと「台湾のマンゴー」でした。「宮崎のマンゴーだろうか不在票」。 |
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選 評 滑稽俳句協会会長 八木健 |
「天」…靴で踏みつぶされる「ヤワ」な霜柱が、こともあろうに、時価十億もの土地を持ちあげた。句の裏には、土地の価格の異常を揶揄する気持がある。土地の価格が何億だろうが関係ない。霜柱は公平だ。担いでしまうのだ。その上でやはり霜柱を見直した可笑しさだろうね。霜柱さん案外やるじゃないかと。
「地」…ふぐの毒と時価を比較するというナンセンスが滑稽である。ふぐの毒の方が恐ろしいに決まっているのだが、ふぐ毒に当たると決まっているわけじゃなし、時価には直近の難題になるかも知れぬ切実さがある。人間は愚かなもので国立競技場設計問題、東芝のインチキ決算、いずれも目先の事を優先して物事を決める愚かさの結果である。ふぐの句には、一脈通じるものがある。
「人」…俳句は、脳裏に浮かんだことを描く。そして、その方法はまず、「つぶやき」である。「つぶやき」には作為がない。正直なものだから精神の記録ツールとして「スグレモノ」のである。この句の滑稽は「初メロン」を期待する「欲」の皮のつっぱりを呟いたことにある。読者が共感できるものだから、作者の正直に喝采するのである。 |
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