五編を選びましたが、その五編に大きな差は感じませんでした。
「陽炎の写真送れとメール来る」。
その前に、陽炎がすごいよ、とメールしたのでしょう、と思わせることも愉快。「一年は長し短し」は障子貼りを言いえていますね。
「曝書して父に親しむ父の死後」、親孝行したい時には≠フ具象化。
「体育の日から始めるダイエット」はふざけているようでいて、真実。
「石橋を叩いて渡る石叩き」は、作為が見えて残念、驚きません。
「見よ平成の御代の最後の初明り」は、「見よ」と「御代」の懲り方。そして、♪見よ東海の空明けて♪ があっての句。「三月」「八月」への思い濃く。
「生身魂ロシアを今もソビエトと」とはまさに生身魂。
「もう咲かぬカトレアなれど置いておく」の「なれど」はやや言い過ぎですが、それが暮らし。
「真空パック剥ぐ鏡開かな」、真空パック剥ぐことが現代の「鏡開き」とは見事な把握。そのことの可笑しさの説明がないことで上等な句。